2009年2月19日木曜日

書評: 金融大崩壊

ここ1週間、日米の経済政策とその金融危機との関わりについて、何冊か軽めの本を読んだ。”金融大崩壊”というタイトルのこの本は、エコノミストの水野氏によって書かれ、金融危機の構造を一般向けに分かりやすくコンパクトに概説している。短いながら印象に残ったのは、日本が過去10数年どうすべきだったかを論じている部分。アメリカは、資本家中心の新自由主義の下で、投資銀行のレバレッジ投資による住宅ブームで豊かになった。ピークより減ったもの厚い資本はまだ手元に残っている。一方で日本は、同じ新自由主義を政治が採りいれながらも、投資が進まなかったので国民の貯蓄はほとんど増えず、絶好のチャンスを逃してしまった。既に同じ手法は使えないので、今後の日本では、製造業による新興国の中産階級向けの輸出を強化すべき、とのこと。
一見、現実的なシナリオで納得感もあるが、実物経済への回帰を謳っているだけで、金融経済の成長を諦めているだけけでもある。国内が成熟した先進国では、国民の大半は既に豊かである以上、伸ばすべきは資本家や企業である。経済のバランスの問題として、国内の労働者問題の完全解決を目指すより、資本家の活力を伸ばす方が、成長の余地が大きい。日本の資本市場・金融経済を、米国の投資銀行の失敗から学び、健全に発展させていくための建設的な議論が必要な時期だと思う。

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