2009年2月28日土曜日

書評: なぜGMは転落したのか―アメリカ年金制度の罠

MBAのテキストには、古くは偉大なるGM、そして近年の停滞についても多くの事例が紹介されており、GMは米国製造業の代表的な存在だ。私が米国に駐在した時もせっかくなのでアメ車をと思い、中古のChevroletを買ったが相次ぐ故障に参って手放し、結局、VWに乗り換えた。GMは今や倒産か救済か、いずれにしても縮小して崩壊寸前である。昨日は、傘下のドイツのOpelも切り離しが決まった。既に、スウェーデンのSaabが破綻した。GMC, Buick, Cadillac, Pontiac, Saturnと残るグループの解体が今後も進むだろう。GMを卓越した企業に育てたアルフレッドスローンは、1931年にMIT Sloan Fellowsの創設を支援している。名著"GMとともに"は、経営の立場から労働組合(UAW)と交渉しながらGMをエクセレントカンパニーへ成長させた歴史である。一方、この本は、ルターが率いるUAWが、企業年金と健康保険を勝ち取ってきた歴史である。会社が雇ったギャングに撃たれて負傷した話など、驚くような話もあった。市場成長期にストライキも辞さない強硬なUAWに対して、デトロイト協定として、会社側が年金という形で将来の莫大な負債を負うことになる。GMは、以後、配当金の4倍もの年金を払っているというデータもあり、この負担がGM凋落の根本原因になった、とある。日本やドイツは国の公的社会保障が充実している分、民間企業の負担が軽いと、この本では指摘されている。しかし、日本と米国は、社会保障の考え方も制度も全く違うので、比較は難しいのではないか。当然、公的負担は、法人税率や巨額の減税措置も考慮する必要があるだろう。
この本は、他にもサンディエゴ州や公共セクターでの現状が書かれている。

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