2009年2月22日日曜日

書評: 資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言

書評を書くかどうか迷った。色々な意味で私はあまり読まない傾向の本だ。会社の方が週末に読んでみては?と勧められて、敢えて読んでみた。ヒルズライブラリに入る経済書は少し偏っていると思うが、この本はそこに置かれない側の本なので、人に勧められなければ手を出すことは無かったと思う。人に本を勧めてもらえることは大変に感謝すべきことで、最優先で読むようにしている。自分の偏向に気づく機会になるし、自分と違う集団に属する人がどんなことを考え共感するのか学ぶ絶好の機会になる。この本を貸してくれた方も父親と同世代の方だった。
この本から一つ学びがあったのは、信頼を重視する国民性と、階級意識が少ない均質性は、経済発展のインフラとなる社会資本として見なせることだ。
最初の現状認識として、新自由主義が格差を生んだと書いてある。この論調は、今のマスコミの主流であり、うっかり反論すれば非常識と言われかねない。しかし、本書でも一応触れているが、低所得者層の増加について、高齢化の影響を差し引いたデータが見つけられない。世代別の所得変化を役所は公表しておらず、非正規雇用の拡大と所得格差の増加の因果関係に、統計的な裏づけが実は難しい。そもそも、製造業の雇用の柔軟化は、海外への工場移転による産業の空洞化とそれによる雇用環境の悪化を防ぐ為の規制緩和だった。仮説として、もし緩和していなかった場合、日本の製造業はグローバル競争で今よりずっと厳しい環境だったと思うが、現状と比較して、所得格差が小さい形で国民全体の平均所得を押し上げることが可能だったか、10-20年スパンで検証している分析を探している。
次に、将来の政策について、大胆な福祉国家化を目指し、その財源を目的税化した消費税20%と書いてある。所得税については、現状より少し下げて見直すとは書いているが、所得再配分をどうするか具体的には書いていない。40万円の税還付で低所得者の実質無税化を謳っているあたり、年金世代には受けるかもしれないが、さすがにその世代の方にも自分達はそこまで無知で強欲でないとお叱りを受けそうだ。その他の提言については、経済学の本なのか社会文化論の本なのか、途中で分からなくなってしまったので、特に学ぶことは出来なかった。

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