2009年11月9日月曜日

15.970 Financial Crises (LTCM)

昨年のリーマン破綻に続く金融危機をきっかけに、1998年に同じく破綻して救済されたLTCM(Long Term Capital Management)のケースが改めて脚光を浴びている。Andrew Loの15.970の授業で、LTCMの元トレーダがゲストスピーカとして、LTCMのTrading Strategyの解説からBailoutに追い込まれるストーリを語った。日本だったら破綻した銀行の関係者が表で内実を語ることは無いと思うが、違法な不良債権隠しによる損失が結果的に税金で処理された日本の場合と違い、LTCMは純粋なトレードの損失でクローズも速かったので、HBSのケースにもなり、関係者もまた同じようなファンドを作ってビジネスをしている。LTCMは、94年に創業して年40%を越えるリターンを上げ、97年には$129 Billionものポジションを持つことになる。LTCMが得意とした金融工学を駆使したConvergenceと呼ばれるアービトレージ手法は今では誰でも知っているが、同一の理論価格を持ちながら価格差のある2つの商品を見つけて、高い方を売り安い方を買いリスク無しでリターンを得るもの。国債だったら発行後のプレミアムがついたOn-the-runをショートし、 off-the-runをロングする。ここまでは本などで読んでいたが、ケースを読むと国債以外にもSwap, Mortgateなど色々な金融商品のスプレッドをアービトレージし、後に破綻に繋がる流動性リスクについても定量的に管理されていたことを知った。15.433 Investmentでは最後2回の授業で同じLTCMのケースを扱うので、Cohen教授がクオンツ側の視点で掘り下げるのが楽しみだ。さて、98年の夏に突如起きたRussian Defaultを契機に、質への逃避(Flight-to-quality)を生じる。市場の歪みは絶好の機会であるはずが、理論価格に収斂するまで持ち堪えられず、Mark-to-Marketによるポジション解消が、市場全体の売りを誘ってさらに損失が膨む状況を囚人のジレンマに喩えた。LTCMは、一日で$500 millionも損を出すようになり、危機前のDaily Return Sigmaが$45 millionだったというから、10 Sigma eventが日常的に起きたことになる。市場危機下では商品間のCorrelationによりSystematic Riskがロングテール分布になることが今では知られている。結果的に、絶好調だった97年末に配当した$2.7 billionを留保していれば、耐えられたはずとのことだった。ケースの最後は、ウォーレンバフェットによる期限付きの救済提案の話で、アラスカでビルゲイツと休暇中に話を進めれていたら連絡の行き違いで期限を逃し、高いバケーションだったと言った話でしめた。

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