2009年5月30日土曜日

ボストン日本人研究者交流会

ボストンでの初めての週末。色々とイベントにお誘い頂き、日本人コミュニティの交流会に幾つか参加した。Edgertonで行われたお昼のBBQパーティでは、MITの学生や企業派遣のVisiting Scholorの方々と知り合いになれた。Media Labの最近の興味ある研究内容について話したら、偶然にもその研究を進められた方だったので、統計値の考察をお聞きできた。日本企業からMITへの研究費・研究者の受入は不況の影響で減りつつあるようだが、お会いしただけでも相当の日本人研究者がMITに滞在している。企業派遣の研究者は、1年間で来ている方が多く、成果を出すのは大変だろうなと思う。共同研究成果のパテントの扱いも学部によって違うようで、こういった企業間の情報交流の場は貴重だと思った。ご夫婦で来られている方もいて、鮮度のいい魚が仕入れられる時間帯から、おからをタダでもらえる穴場情報(&1ヶ月飽きずに食べる方法)まで、ボストン生活をenjoyされているようだった。

BBQの後は、日本人研究者交流会を聴講した。この研究会では、ボストンに滞在する日本人の方が持ち回りで発表している。1つ目の講演は、政府派遣のHKSの方より、最近のエネルギー情勢をテーマに、主に資源安保・外交の視点から日本のエネルギー政策の基本的な考え方をお話された。原油一極集中からバランス化、資源外交の戦略的運用、高速増殖炉の実用化などは、10年前に大学の授業で受けた講義と、ポリシの根本は不変だ。しかし、資源権益者としての中国の台頭や、資源国としての中央アジアの重要性など、舞台とプレーヤが変わっている。Q&Aでは、権益獲得における政府の役割の必要性について質問があったが、多くの資源国では資源権益を一部の関係者が握っており、見返りに経済支援や産業協力をパッケージに交渉されるため、商社やメーカが私企業の立場で交渉するのは骨が折れるとの回答で、納得できた。資源獲得の膨大なコストを考慮すると、代替エネルギーさらには夢の高速増殖炉という戦略オプションは、実用性は未確立でも大事な手札だろう。今後、米国での原発解禁に向けて、日本の重電メーカの海外進出が急速に進んでおり、優秀な人材がこの分野に集まって何か新しいトレンドが生み出されるかもしれない。

2つ目の講演は、Harvard Education Dept.とTuck MBAの方による、Teach for Americaの日本への展開について。Teach for Americaは私は初めて聞いた。全米の公立学校の地域格差の解消の為、ハーバード卒等の優秀な学生を学校に送り込むNPOである。教育NPOとしては先日、日本で講演を聴いたRoom-to-readがあるが、やっている中身は違うものの、予算構成やfund raisingのマーケティング手法は近いものがあった。日本への導入手法については、質疑応答では喧々諤々といった感じだった。教育の話はどこで聞いても、個人の実体験をベースに、皆が思い入れを語り出す傾向が強い。ところで、このNPOが解決したい問題の本質は、公立校の地域間格差の解消のようで、まずは英語の夏合宿から始めるという入り口は悪くなさそう。ただ、肝心の公立学校側に危機感が無いのに、受け入れ態勢を整備させるステップは厳しそうだ。私が寄付集めに関わるNPOでは、地方の埋もれた異才を集めて数学の夏合宿をするもので、同じく学生ボランティアを動員して運営まで携わる。本来、小回りが得意なはずのNPO自身が運営までコミットすると非効率だし、スケールアウトが難しい。Room-to-readとTeach for Americaのやり方がうまいのは、運営の困難さは受け入れ側の学校なり政府に負担させて、本や先生を送るアレンジだけに特化している点だろう。戦略コンサルの多いMBA出身者が立ち上げたモデルという共通点も頷ける。

講演の後は、近くのホテルで懇親会。これがまた多士済々で面白かった。ハーバードメディカルやMGHのお医者様もいて、こんなに医学が進歩してるんだと驚くような話もあり、また、よく聞くと起業からExitに成功した凄いキャリアの人とも飲みかわし、さすがにハーバード、MITの人の集まる会だった。また参加しようと思う。

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