2009年12月25日金曜日

15.223 Global Markets, National Politics and the Competitive Advantage of Firms

FellowsのH2コア科目の15.223 Global Markets. IMFでチーフエコノミストを務めた後、MIT教授に転じたSimon Johnsonが、国際経済、貿易論を教える。毎回、豊富な読み物が用意され、授業の日の朝刊(FT)をベースに時事問題も議論され、全ては読みきれないほどだ。比較優位といった貿易論のフレームワークは一切用いず、ケースを元に国家経済運営の視点で通商経済政策を議論するスタイル。アカデミックさが全くなく、教授自身の強い主張で議論がリードされ、米国の利益を代表する立場から、米国から他国の問題点に批判的に切り込まれる。経済政策の政治プロセスと国家の競争力に議論の重きをおく、昔の「大接戦」のレスターサローのようなタイプで、ゆくゆくはワシントン入りを狙っているのではないかと思われる。教授が主催するブログのBaselinescenario.comでは、日々の時事問題に関するコラムが参考になる。授業の前半は、Michael Porterの「国家の競争優位論」に始まり、よほど好きなのかシンガポールの産業保護育成政策がたびたび賞賛される。後半は、ブラッドダイヤモンドや抗エイズ薬の知的所有権をテーマに、通商における南北対立が議論された。
授業の評価は人によって大きく分かれ、International studentsには教授の展開する米国の一方的な主張が嫌われる部分もあった。私としては、好き嫌いは置いておいても、エコノミストならではの批判的な視点に学ぶ部分が大きかった。このようなエコノミストの競争視点の貿易論は、ポール・クルーグマンによると(和書だと「良い経済学・悪い経済学」など)、経済学のファンダメンタルに基づかない政治的プロパガンダと見なされており、見比べて読んだり、最近の資本規制と重ねて考えると悩みがつきない。経済は、色々な人がそれぞれの立場で主張するため、本質を見誤らないだけの知見を持つには大変だと実感した。また、Final Reportは、チームで各国の最近の経済政策を議論することが求められ、日本の財政赤字・労働人口問題と、中国のコーポレートガバナンスや資本規制の現状をそれぞれテーマに選んだ。中国市場に興味のあるメンバーと一緒に新しいことを学ぶ良い勉強になった。

0 件のコメント:

コメントを投稿