2010年1月23日土曜日

G-Labのまとめ

ボストンに戻ってきて、3週間に及んだG-labでの学びを纏めてみることに。1ヶ月近く酷寒のボストンに家族を残して行くには相応の覚悟が要り、履修を決める時点やチーム・プロジェクトを決める途中で、正直なところ何度かやめようかと逡巡した。結果的には、投じた時間以上に実践的な学びのあったと言えるクラスであり、とても楽しかった。

(1)プロジェクト
一番良かった点は、プロジェクト自体が面白かったこと。典型的なG-labは、途上国の起業家によるアメリカ市場参入プロジェクト。一方、私のプロジェクトは、欧州の大企業が東南アジア市場に参入するもので、メーカの海外進出に共通する課題を経験できた。インドネシアの2輪市場は、様々な規制に適応しながら日本メーカ同士が切磋琢磨して40年以上かけて作りこまれた。2輪車はモジュール型産業であるため、地場メーカの低価格化が脅威であり、実際、中国・インドでは日本メーカはシェアを失いつつある。しかし、インドネシアに限っては日本メーカの高い製品品質とアフターサービスで市場から支持されている。ここに、欧州メーカが高級ブランドを活かして、ある程度の物量の見込めるニッチ領域に参入するマーケティング戦略を提言するプロジェクト。日本の電機メーカに勤める自分からすると、攻守入替えて日本メーカの弱点を攻める視点で考えたのが良い頭の訓練になった。また、電子部品も輸送機器も、ディーラ網に纏わるメーカ側の悩みは同じであり、商品の位置づけに合ったパートナを主体的に選ばなくてはダメだというのも、再確認できた。メーカとして課題は理解できても、その解を外部から助言するのはまた容易ではなかった。バリューとして何を提供できたかは微妙だが、実地調査を通じた既存のパートナの改善策に加え、ドバイの砂漠ツアーで偶然会った人の紹介で同業のファミリー企業のオーナに繋げる等、あらゆる手段で新しいパートナ候補数社に人脈を作った。会社でこの手のパートナ・顧客洗い出しに調査会社を使う場合ほど網羅的にやるリソースは無く、経験的に筋の良いパートナを一本釣りした。1ヶ月足らずのFS調査でも何とかなるものだと思った。

(2)色々な人との出会い
また、プロジェクトを通じて、多種多様な人と会えた点も毎日新鮮だった。机に座ってチーム内で議論したり資料を纏める時間は結局最後の半日程度しか取らず、大半の時間を既存の自社・競合ディーラ、メディア(ブロガー等)、法律事務所などを訪問してインタビューしたり、ユーザイベントに参加してのヒアリングに費やした。外に出て色々な人と話せる経験もプロジェクト型授業ならではで、学生という身分の有り難さも実感。会社だったら、競合企業とはまず話すことは無いし、自社製品を記事に出すメディア関係者と会っても利害関係に縛られてしまうから、フリーな視点で業界を多面的に展望する経験は初めて。さらに、インドネシアのMBAの学生達とも友達になれたし、日本企業の方にもお会いして駐在員生活の様子を伺うことが出来て、現地の文化や生活に楽しく触れられた。これは、短期出張や旅行者では体感できないものだった。そして、ホスト企業からは、イタリア人、イギリス人、シンガポール人が来ていた。イタリア人の一人は、Sloan Fellowsの卒業生で、日本メーカの強みについて一般的なことから彼独自の考え方や、欧州企業がアジアで抱える人材確保の悩みなど、色々と話してくれた。ついでに、シンガポール人のSinglishもだいぶ聞けるようになった。

(3)チームメート
最後に、チームメイト。いいメンバに助けられた。Internationalなチームで、スペイン人メンバはイタリア人と言葉もウマも合うことからホスト企業を理解する橋渡しになり、中国人メンバはインタビュー相手のディーラ達が華僑であるところから親近感を得る触媒となった。外国人のチームメンバと文字通り寝食を共にし、相部屋のルームメートとは生活をシェアして、46時中英語で生活するのも初めての経験。私がVaio Type-Pをはじめ飛行機の手荷物に収まる範囲でしか物を持たないのに対して、ルームメートはエルゴノミックな巨大キーボードを持ち込んでおり、コンパクトさとは無縁なアメリカ人らしい生活に驚愕した。食事の金銭感覚や割り勘の方法も人それぞれだし、歩いて移動する自由のないジャカルタ生活をストレスフルと悲鳴を上げるメンバも出てくる。それでも、一緒にバリ島やジョグジャの観光旅行から、朝のゴルフ練習まで、みんなインドネシアをエンジョイしようという点では共通だった。

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