2009年3月22日日曜日

書評: 三つの帝国の時代(The Second World)

国際政治に関する本を手にとった。書名”「三つの帝国」の時代-アメリカ・EU・中国のどこが世界を制覇するか”、講談社の本。著者は、パラグ・カンナという77年生まれの若いインド人でジョージタウン大学で学んだ後、今はロンドンのLSEの博士課程にいるそうだ。この年でCNNやトークショーで人気があるそうだから凄い人である。専門的ながら非常に分かりやすく国際関係論の視点で、著者が第2世界と呼ぶ中小国を分析している。和書の国際関係論の本というと、日本で定評のある学者が書いた本でも専門的過ぎて歴史的・地政学的な陳腐な解説に終始したり、はたまた、米国(中国)帝国主義とかセンセーショナルで中身が薄っぺらい娯楽本が多い。一方、この本はウクライナ、トルコ、ブラジル、インドネシア、エジプトといったいわゆる地域大国から、中央アジアの○○スタン、セルビア、マレーシア、コロンビアまで30カ国近い中小国の冷戦後の政治体制から資源をめぐる争い、その各国・地域における現代のEU、中国、アメリカとの3極の間のパワーバランスを解説している。
タイトルにもある第2世界(The second world)をどこまで取り込めるかが、3極の世界覇権を決めるという視点で書かれている。冷戦後の世界観を学ぶ上では、非常に有意義な内容だと思う。有名なサミュエルハンチントンの「文明の衝突」では、宗教や民族によるイデオロギー衝突が対決の主軸であったが、この本によると、冷戦後の対決の要因は、多くが資源を代表とする経済的な競争及び地域覇権の追求が多かった点、また、3極のアプローチが根本的に異なる。米国は軍事力、EUはソフトパワー、中国は製品や人(移民)によって、影響力を拡大している。また、著者は自身で100カ国を旅して、所々、市民から直接聞いた話があるだけでなく、国民感情を代弁するような臨場感がある。ジムロジャーズがバイクで世界を旅しながら、各国の投資機会について解説する本があったが、この本はちょうどその国際関係論バージョンか。
MBAスクールでは、合格者向けにスクールを選んでもらう為のアピールとして、奨学金、クラブ、各種イベントの案内が来るが、Admissionからは今年のクラスは**か国の学生が合格してfantasticなクラスになるとアピールが来る。MBAのクラスでは、今まで会ったことのない国の人と友人になれることが楽しみである。国のバラエティの多さという意味では欧州校が強く、LBS, CambridgeのR1合格者を見てもそのバラエティは圧倒的かな。LBSの合格者向けポータルでは、欧州の小国と思われる聞いたことがない国(地域?)もいた。この本の著者もLSEだし真の国際性は欧州にあると感じるので、LBSで国際性を身につける面白さとキャリアへのアドバンテージは大きいと思った。また、米国スクールでは、UCB HaasもInternationalの人数比が多いようだが例年だとアジア圏に偏りがある。MIT Sloan Fellowsでも今年は100人の学生に対して30カ国近い国籍のバラエティがあるようで、こちらは南米・アジア・ヨーロッパと幅広さがありそうだ。この本の話題がクラスメートとの話のきっかけになればと思う。

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